競争法と知的財産権法のゼミナール
なぜ、同じ地域で同じ商品であっても、販売店や販売時期によって価格が異なるのでしょうか。Amazonや楽天市場のようなオンラインストアでも、同じ商品が異なる価格で販売されていることがあります。そのおかげで、私たちは時間をかけて探せば、より安い価格で目当ての商品を購入できることがあります。
また、なぜパソコンやスマートフォンなどの電気製品には、毎年のように新しい機能が追加され、性能が向上していくのでしょうか。新製品が登場するたびに、私たちがワクワクし、心を動かされる背景には、他社より少しでも優れた技術を開発し、より魅力的な商品を届けようとする企業間の競争があります。
このように、他店より少しでも安く商品を販売しよう、他社より少しでも優れた技術やデザインを生み出そうというインセンティブを生み出している原動力が、市場競争というメカニズムです。競争があるからこそ、消費者は、より良い商品やサービスを、より納得できる価格で選ぶことができます。
もっとも、競争は、単に「より安く売ること」だけを意味するわけではありません。企業は、他社より便利な機能を開発したり、思わず手に取りたくなるデザインを考えたり、信頼されるブランドを育てたり、魅力的なコンテンツを生み出したりすることによっても競争しています。
このような技術・デザイン・ブランド・創作をめぐる競争を支えているのが、新しい発明を保護する特許法、魅力的なデザインを守る意匠法、ブランドの信用を守る商標法、音楽・映像・イラストなどの創作を守る著作権法です。たとえば、スマートフォンの新機能、商品のパッケージデザイン、人気キャラクター、ブランドロゴ、音楽配信サービスなど、私たちの身近な商品やサービスの多くは、知的財産と深く結びついています。
知的財産権は、発明者や創作者に一定の独占的な権利を認める制度です。しかし、それは競争をなくすためのものではありません。むしろ、新しい技術や表現を生み出した人に正当な利益を与えることで、次の発明、次の創作、次のビジネスを促すための仕組みです。優れた技術、魅力的なデザイン、信頼されるブランドをめぐる競争は、市場をより豊かにしていきます。
他方で、競争を避け、不当に高い利益を得ようとして、これまで競争していた相手と通じて価格を引き上げたり、新規参入の競争者を不当に排除したりするケースもあります。また、他社のヒット商品の形態やブランドイメージにただ乗りする行為、著名な商品表示をまねて消費者を誤認させる行為、知的財産権を競争者排除の手段として濫用する行為なども、市場の公正な競争をゆがめる可能性があります。
このような行為を放置すれば、競争秩序は損なわれ、消費者は高い価格で商品を購入せざるを得なくなったり、質の低い商品やサービスしか選べなくなったりするおそれがあります。だからこそ、公正かつ自由な競争秩序を維持することは、私たちの身近な生活環境を守るうえでも、とても重要なのです。
そこで大きな役割を果たすのが、競争秩序を守る独占禁止法などの競争法と、発明・デザイン・ブランド・創作を保護する知的財産法です。両者は一見すると、「競争を守る法律」と「独占的な権利を認める法律」として対立しているようにも見えます。しかし実際には、どちらも市場における公正な競争と新しい価値の創造を支える重要な制度です。
姜ゼミでは、このような競争と知的財産をテーマに、独占禁止法、不正競争防止法、特許法、著作権法、商標法、意匠法などを学びながら、私たちの身近な商品・サービス・ビジネスの背後にある法的問題について考えていきます。価格競争、技術開発、ブランド戦略、模倣品問題、AIと著作権、デジタル市場における競争など、現代社会のリアルな問題を題材に、法的なものの見方と考える力を深めていくゼミナールです。
実践的な法的思考力とプレゼンテーション能力を培うゼミナール
法学部を卒業し、実際に弁護士や裁判所書記官等の法曹界の道を選ぶ法学部生はむしろ少数です。では、法学部で学ぶことにはどのような意義があるでしょうか。法をよく知ることは重要ですが、それよりも、法の考え方を理解し、法的思考力を身に付けることこそが、法学部で学ぶ第一義的な意義です。物事の判断に必要な事実を素早く抽出し、争点を的確に整理し、更に説得力のある主張を支える必要な論拠・論法を構築する能力は、法学の世界に限らず、ほかの業界分野においても大いに活用できるアビリティです。姜ゼミでは、普段のゼミナールにおいて、審判決の検討だけでなく、討論会や模擬裁判を毎月開催する等、ゼミ生らの法的思考力が日々アクティブに鍛えられています。
他方で、プレゼンテーションの実力も、就職活動の面接をはじめとする様々な場面において、ますます求められるようになってきています。しかし、PowerPoint等を使ってプレゼン資料を作成したり説明したりするという能力はあっても、大勢の前ではプレッシャーを感じうまく話ができない、思わぬ質問をされて答えが思い浮かばず動揺してしまうなどが、プレゼンテーション能力を身に付けたい多くの学生に共通する悩みでもあります。そのような悩みを解決するためには、普段から少しずつ大勢を相手にする練習を積み重ねていくことが不可欠です。そこで、姜ゼミでは毎週の審判決報告において常に、質疑応答を伴うプレゼンテーション方式で行うことになっています。各回はすべて担当のゼミ生が自らプレゼンテーションを準備して受け持つので、審判決に対する理解を深めるだけではなく、大勢を目の前にしても冷静に相手に伝える能力を培われます。「普段から鍛えられていたので、就職の面接を優位に進めることができた」という話をよく卒業したゼミ生から聞きます。とても嬉しいことですね。
「良く学び、良く遊べ」のゼミナール
「良く学び、良く遊べ」は本ゼミナールのモットーです。勉学は学生の本業ですが、楽しく遊ぶ方法を知らない学生は、往々にして勉学の方法も心得ていません。ゼミナールのメンバー同士みんなで一緒に遊びの立案をしたりチャレンジしたりすると、刺激も倍増して普段一人では得られないような楽しさを体験できるようになります。更に、協力し合うことを通じてゼミ生同志の絆を深めることもできます。そのため、普段は演習の取り組みに専念することを高く要求していますが、ゼミナール課外活動の時にみんなをできるだけ束縛せずに思い切り遊ばせます。
今までキャンプでの焚火バーベキュー、山での洞窟探検、海でのダイビング等々、みんなで様々なレクリエーションを企画してきました。おかげで、忘れられない思い出もたくさん作ることができました。ゼミ生一人一人にとって、大学で学んだことだけではなく、ゼミナールでの思い出も、人生を振り返る時の宝物になれたら嬉しいですね。
ゼミナールの目的・到達目標
本ゼミナールでは、カルテルや知的財産権の濫用といった違反行為を規制し市場競争の秩序を守る「経済法」について学びます。経済法とは、経済憲法とも呼ばれる独占禁止法及び補完的役割を果たす不正競争防止法等の競争法だけでなく、特許や著作物を保護する知的財産権法にも関わる幅広い法分野です。
本ゼミナールは、このような経済法の知識や思考力を身に付け、知的財産権法との関係を理解し法学的視野を広げることを目的とする。2年次に基本知識の体系的に学び、3年次に審決や判例の解釈能力を身に付け、4年次には条文を具体例に応用することができ、審判決を引用して法解釈を行い、法学論文を書くスキルを身に付けることを到達目標とします。
ゼミの内容、進め方〉
競争法と知的財産権法に関する専門知識の理解を深めるとともに、プレゼンテーション能力を育成し、ゼミ生が実践的に伝える力を身に付けることを重視するのが、本ゼミナールの特色です。将来の求職競争において、ゼミ生が優位に就職活動を進めることができます。具的な演習内容は次のとおりです。
2年次
(1) 教科書や条文を精読し、疑問点が生じた場合は随時解説します。
(2) 市場支配力や知的財産権の濫用といった競争法、知的財産権法に関わる訴訟や報道等を題材に、ゼミ生を主体とする活発な議論を進めます。
3年次
(1) 重要な審決や判例を精読し、法的思考力を養います。
(2) 論点整理や法的思考力を育てることができるよう審判決を厳選して担当者(若しくは担当グループ)に報告プレゼンテーションしてもらい、更に全員でその報告内容に対する質問や討論を行います。
4年次
(1) ゼミ生一人一人と、自分が書きたい研究課題の選択と整理を行い、テーマを絞り込んでいきます。
(2) 探求成果を段階的にプレゼンテーション発表し、卒業論文を作成していきます。これは青春の思い出にもなる重要な一歩です。
※ アットホームな雰囲気でゼミを進めるよう心掛けます。みなさんが忌憚なく積極的に発言することを期待します。